母は、海のすぐ近くの小さな家に1人で住んでいる、とても綺麗な人だった。

「ママっ!」


「あら。サラじゃない。どうしたの?」


「ママの歌が聞きたくて来ちゃった。」


「サラったら。」


そう言うと母は歌い出した。

母が歌ってくれた歌は、母の母つまり私の祖母が歌っていた歌らしい。


優しい歌で、私は大好きだった。


歌い終わると母は私に微笑んできた。


「サラ。あなたも歌ってご覧なさい。綺麗な声をしているんだから。」


母にそう言われ、私は母と一緒に歌った。

私は、この時間が1番好きだった。


「ごめんねサラ。私は人間だからサラと一緒住めなくて…」

切ない顔で母は言ってきた。


「大丈夫よ。ママ。私毎日ママに会いに行くから寂しくないよ。それに、寂しいときはこの歌を歌うと寂しい気持ちはどっかに行ってしまうの。」


「そう。ほらもう日が暮れてきたから帰りなさい。」


母の言うとおり、空はオレンジ色に染まっていた。


「だね。それじゃまた明日会いに行くね。」


私は、そう言って海の中に入っていった。



もう会うことが、できなくなるとも知らずに…