笑顔は絶やさない。

気持ちは悟らせない。


「バイバイ、日向」

「待ってってば!!」


掴まれたトレンチコートの裾。

上着も着ないで店の外に出てきた日向は少し身を震わせながら、それでも離さなかった。


「さっきの聞いてたんでしょ?」

「何のこと?」

「麻央、私はね……」


伶耶に会ったせいかもしれない。

こんなにも鮮明に昔のことを思い出し、記憶が重なるのは。


仲の良いフリして私を置いていった友達。

仲の良いフリして陰口叩いていた友達。


信じるだけバカを見る。


「うるさいっ!! 私に構わないでよ、いつもいつも……いいかげん目障りなの!!」