何とか今日のフライト三便を終えた頃には、午後九時を回っていた。

ステイ先の関空。

制服を脱いで私服に着替え、先に業務を終えた日向の待つ店へと向かう。


夜風はまだ肌寒くて、トレンチコートを抱え込むようにして身を丸くする。

おろした髪は風になびいて乱れ、手櫛で整えてもまた乱れ、街の雑踏の中ため息を吐く。


見上げた空は薄い雲で覆われ、月明かりに照らされている部分だけ滲んだ色を浮かべていた。


「おつかれー、こっちこっち」


メールに書かれた店に辿り着きドアを開けて一歩。

店内に入ると日向の明るい声が耳に届き、手招きしている姿が見えた。


同じステイ先だったら、必ずと言っていいほど誘ってくる日向。

それは今日も例外ではなく。