「すみません、あのー」 今日もお客様に呼ばれ、様々な要望を受ける。 水平飛行から着陸準備に取りかかるまでの僅かな時間。 だけどこんなにも長くて、早く時間が経ってほしいと感じたのは初めて。 淡々とこなす業務。 近づく目的地。 書類に真剣な彼。 隣を通るたび妙な緊張感を覚え、いつもとは違う意味で気が休まることがない。 だけど……。 いつまでも書類と睨めっこしている彼が、私に気付くことなんてないんだって気が緩みはじめたその時。 不意に名前を呼ばれた。 「あ、れ? もしかして麻央?」