「麻央の考えていることが分からないんだよ」


また、か。

ため息を吐くことさえ気だるくなる出来事に、ただその光景を人事の様に眺めていた。

これで何度目だろうかと数え出したらキリがないこの状況に、いつの頃からか慣れてしまっていた。

言い寄ってくるのは相手で、別れを切り出すのも相手。そこに私の感情は何一つ存在していない。


「俺のことなんか信用してないんだろ？」

「……」

「言い返しもしないのか……。結局好きだったのは俺だけだったってわけだ」


好きだとか嫌いだとか、必要だとか信頼だとか。私の感情はどこか欠落しているのだから。

最後ぐらい嘘の一言でも言って相手の不快感を拭えれば、まだ救いようがあるかもしれないのに。

それさえできない冷酷な自分に反吐さえ出てきそうだった。