憂鬱な気持ちを抱えたまま、ゆっくりと深呼吸をする。 大丈夫。 落ち着いて。 もしかしたら似てるだけで本人じゃないかもしれないし、本人だとしても覚えてないかもしれない。 ガタンッ――。 考えながら歩いていたせいで、ドアにぶつけてしまったカートが大きな音を立てる。 おかげでハッとした。 思い出すのは“お客様への最高のサービスを“という私の仕事への理念。 笑顔を絶やさずに迅速かつ丁寧な接客を。 軽快に開いたドアから、お客様のもとへと一歩踏み出した。