直道の部屋へ案内され、テーブルには直道と中年女性が並んで座り、凛花は彼らの向かい側に一人で座った。


「改めて紹介するけれど、俺のママだよ」


 直道は中年女性を私に紹介すると、今度は凛花を中年女性に紹介した。


「直くんに彼女が出来たのは本当だったのねぇ。どうぞこれからも遠慮なくいらして下さいましね」


 中年女性、いや、直道のママは相変わらず冷たい表情を凛花だけに向けてそう云う。明らかに、もう来ないでくれと云わんばかりの表情をしているのに。

 困惑している凛花を気付きもしない直道は、ママと楽しそうに会話を始めた。まるでこの場に直道とママの二人しかいないような素振りで。

 何これ? 私よりママが恋人みたいじゃない。こんな二人の会話に入れるわけないし、もう帰りたい。

 凛花はそんなことを考えながら、直道の部屋を見回した。
 六畳くらいの部屋に、ベッド、テーブル、棚があるのだけれど、棚の上で視線が止まる。そこには、写真立てが八個、一個は直道と凛花のツーショット、それは恋人同士なのだから当然かもしれない。しかし、七個は直道とママのツーショットの写真が飾られていた。


 その時、凛花の頭に浮かんだのは『マザコン』という言葉である。