二日後、駅前広場に向かうと、すでに幸隆が待っている。


「幸隆さん、お待たせ」


「そんなに待ってないよ。さぁ行こう。俺の一番お気に入りの店に連れて行くよ」


 幸隆は嬉しそうに、シャクレたアゴを撫でている。

 駅前広場から少し離れたところまで歩くと、そこは居酒屋が多い通りだった。
 何処かの居酒屋に連れて行く気かしら。
 凛花がキョロキョロしていると、幸隆が明るく声をかけた。


「ここだよ、凛花さん」


 そこは居酒屋ではなく、牛丼屋だった……。看板にはキャンペーン期間中だけ290円の文字が見える。

 初デートで290円の牛丼……。でも変に気取っているよりは、いいのかもしれない。ありのままを見せているということなのだろうし。

 凛花は良い方に解釈した。それが後悔する判断だと気付かずに。
 牛丼屋に入り、牛丼を二つ注文した。

 牛丼が運ばれてくると、幸隆は饒舌に会話をしながら食べている。お米が生産されるまでの話しや農家の話しだった。

 もしかして彼は、うんちく男なのだろうか? でもそれならば、特に嫌いになる理由までには結びつかないだろう。