その後、浩平が云ったように、何度か偶然に電車で会い、やがて告白されることになる。不思議なことに、帰りの電車でも偶然会うことが増えたのだった。


「俺、凛花のことがずっと好きだった。中学の時は振られたけど、今度こそ付き合って欲しい」


 大事なのは中身だし、私は浩平が中学の時を知っている。だから健児のようにミュージカル男でもないだろうし、付き合ってみてもいいかな。

 それから浩平と付き合い始めたのだが、異変はすぐに訪れた――。

 私は風邪をひき、会社を休み寝込んでいると、携帯電話が何度も鳴っている。喉が痛いため、電話に出るのは辛いなと思っていたけれど、携帯が鳴り止むことはない。

 重い身体を起こし、テーブルの上に置いてある携帯を掴むとディスプレイを見た。
 何度もかけてきていたのは浩平だった。


「もしもし」


 凛花は通話ボタンを押し、掠れた声を出す。


「凛花! どうして駅にいないんだよ! 俺は心配して何度も電話をかけたのに出ないし。朝から他の男と会ってたんじゃないだろうな。今電話に出なかったら、凛花の会社に確かめに行くところだったんだぞ」


 浩平は電話が繋がると、勢いよく怒鳴り散らした。
 心配してくれたのは嬉しいけれど、何でそこまで云われなければいけないの。それに会社にまで乗り込もうとしてたなんて……。

 凛花は溜息混じりに、風邪で会社を休んだことを告げると、今度は泣き出したのである。


「ごめんよぉ……ひっく……。俺のこと嫌いにならないでくれ……ひっく」