もう一発殴ろうとしたのを、朝田組の奴らに止められた。

いかりが収まらない。


「てめえ、自分の娘が亡くなったというのに、金の無心かよ!」


純の父親が驚いていた。


「純が亡くなった。」


「あぁ。」


純の親父は、純が死んだ事を知らなかった。


「マサ、悪かったな、色々と済まなかった。」


え、急に純の親父の態度が変わる。


こんな親父でも、純に取ってはたった一人の親父。


俺は覚悟を決めた。


「線香を上げてやって下さい。」


純の父親は無言で線香を上げて返って行った。


何回も、何回も深く頭を下げて。


純、おまえの父親が会いに来てくれたよ。


良かったな純、おまえは父親に殴られても決して泣き言を言わなかった。


《あんな親父でも私にとっては、たった一人の父親だから。》


あのどうしようもない父親に、純の気持ちが通じたみたいだ。


純、良かったな。


俺たち二人はろくでもない親に育てられたが、今があるから良いとするか。


俺は純と出会えて幸せだった。