「俺なんて小物だよ。俺なんかより、すっごい人、知ってるし」

「へぇ。遊間よりもスゴイ人って、どんな人?」

「う~ん。そうだねぇ」

遊間は沈みゆく夕日を見つめて、眼を細めた。

「俺も大概のことは難なくこなせるから、ある程度、自信過剰だったんだよね。でも3年前、俺よりすっごい人を見つけちゃってさ」

3年前…!

イヤな言葉に、心臓がギリッと痛んだ。

「そっそう…」

「俺はさ、人に命じなければ動かせないけど、その人は命じなくても人を動かせたんだ」

「…スゴイね」

「うん。その人がいるだけで、周りの雰囲気とか違っててさ。同じ人間だなんて思えないぐらい、スゴイ人」

遊間はうっとりと、夢見るように語る。

けれど僕は自分の血の気が下がっていく音が聞こえた。