「ねー、優子! 見て!」


 私―――坂山 優子(サカヤマ ユウコ)は誰かから呼ばれて、ふり返った。

 そこには、とても可愛らしい少女が立っていた。
 私の幼馴染だ。岸本 莉音(キシモト リオン)。ぶりっこと呼ばれることもあるが、男子からモテている。

 横にはもう一人、森 幸恵(モリ サチエ)がいた。糸のように細い目をつり上げて、笑っている。

 そして、二人とも―――石神 正輝(イシガミ マサキ)の腕を掴んでいた。絡めている、という表現のほうがふさわしいかもしれない。
 彼は私の好きな人であり、目があった途端に赤面して目を逸らしてしまう……。


「捕まえたのー!」


 私が石神のことを好きだと知っている莉音が、まるで自慢するかのように、満面の笑みで見せつけてきた。
 腹から憎悪がこみ上げて来た。


「・・・・・・」


 私は無言で薄笑いをする。
 だが内心、

 ・・・そんなことで呼んだの? ってか捕まえたからって何!? いちいち見せ付けなくてもいいから!

 と思い、莉音と幸恵にムカッと腹を立てた。