速足で歩いていると、立ち入り禁止と
黒字で書かれた黄色のテープが
貼ってあるのが遠目でわかった。

そこは亜里沙の血の跡が残っている場所に違いない!

鮮血なら昨日見たが、そういえば
時間が経った後の血は見たことがない。
だから、もう胸がはち切れそうだった。
私は楽しみで仕方なくて、
全速力で走ってその場へ行った。

テープに囲まれた血だまりの跡は、
警察の手で掃除されることもなく、
アスファルトの地面に吸収されてまだ残存していた。
そのことにホッと胸をなでおろした瞬間、

期待していたような、美しい血ではなかった。
どす黒くアスファルトを染めているだけだ。

―――何よ、これ……。

昨日の美しい真っ赤な鮮血とのギャップがひどく、
私は愕然とした。

やはり亜里沙は穢れている人間なんだ。
だから血がこんなにもどす黒くて汚いんだ。

だが、鮮血は美しかった。
穢れている人間のはずなのに私の目には神聖に映った。
感動さえも覚えた。

穢れている人間の血は、時間が経つと黒ずむとわかった。
それじゃあ、穢れていない人間の血は?
時間が経ったらどうなるのだろうか。
私は興味を持った。

―――まぁどちらにしろ、どんな人間の血でも美しいんだから、
時間が経った血のことなんてどうでもいいかな……。

この時、既に私は鮮血の虜になっていた。