「叔母様…っ!!」
もう、我慢できない。母様を馬鹿にして、辱しめるような言い方は許さない。
だけど、我慢出来なかったのはあたしだけじゃなかったようで、隣の父様が立ち上がり、叔母様のもとへ行く。
──パン…ッ
何かが弾けるようなその鋭い音は叔母様の頬に赤く跡を残した。
「あなた!!」
「美代子、僕のことを罵倒したければするがいい。だけど、千春を悪く言うな。千春がどれだけ、渡瀬家に見合うように努力しているのか知らないのか」
「…兄さ…っ!!」
父様が手を上げるのを初めて見た。あたしは唖然とし、お婆様も、母様も、同じような表情を浮かべていた。
「君がこの前の茶会で、手違いで特注の和菓子が足りなくなったことがあったな」
「…結果的に間に合ったわ」
「間に合ったんじゃない、間に合わせてくれたんだ」
その茶会には、あたしも出席したから、トラブルのことは知っていた。
かなり大規模の集まりで、京都の旧家まで招いたもので、お茶も御菓子も一級品ということで、いつものお店に特注の御菓子を頼んだ。
…だけど、その茶会を仕切っていた叔母様のミスで御菓子が足らなくなって、どうしようかとなった時に、ぎりぎり始まる数分前に足りなかった個数が届いた。

