叔母様も、父様も母様も、あたしも一斉に声がした方を見遣る。



「…お婆様」



前代渡瀬家当主並びに現渡瀬流総師範、渡瀬美寿々の姿があった。



「お母様…っ」

「…母さん」



叔母様は明らかに理性を失い、慌てふためいていた。

…それに、お婆様も京都までお稽古の出張でしばらくお留守の予定だった筈なのに。



「随分な暴れまわりようね」

「お…お母様、私は渡瀬家の繁栄を願い…」

「臣下は北面す…貴女は何故自分が主の位置について、現当主の兄を臣下の位置に座らせているのかしら」


お婆様は、優しいし温かい人。だけど、しきたりには絶対に甘さなど見せない方。



「母さん、それは…」

「前代当主、実質現顧問である私に知らせず、次期当主の結婚話を進めるとは何事ですか!」



今まで見たことないぐらいのお婆様のお怒りに身体が縮み込む。



「……っ!!もとはと言えば、お母様が有力一族と結婚した私ではなく一般人などと部外の者の血を混ぜた兄さんを当主に選んだのが…」


部外ノ者ノ血。