愛しい。決して、過去形になどならない…なれないこの想いは、受け取ってくれる人がいないならば何処へ行ってしまうのだろう。
彼は狡い。好きにならせる材料は山程置いていったくせに、想いを伝える道は残してくれなかった。
行き先は貴方の隣。片道切符。
帰ってこなくていい。
片道、だけでも、いい…から。
想いを、あの花びら達みたいに散らしたくない。
「……ただ今戻りました」
「お嬢様…っ!」
流衣がついていく、と言ってくれたけれどこれはあたしの問題だから。
─…蒔いた種は自分で刈り取るわ。
御手伝いの人が心配そうに通してくれたのは、あの大広間。
誰が何を言う為に、通されたかなんて分かってる。
「貴女、何をしたか分かっているの」
「…自分のした事の重大さは、重々承知しております」
「渡瀬家の顔に泥を塗りたいのね」
「……っ叔母様」
「黙りなさいっ!!私がどんなに恥をかいたことか!!でも、分かってるわよね?貴女は約束を破った。私が兄さんに何をしようと文句なんて」
「黙るのは貴女です、美夜子」

