ナツの家の人が運転してくれた車を降りると昔よく来た河原に連れてかれて、みんなで座った。
水面がキラキラ輝いていて、目を細めずにはいられない。
静かな空間。
間を通る風。
「…何も、言わないし聞かないのね」
車に乗ってから一言も喋らない幼馴染みさんたちは、ただ笑うだけ。
「さっきの…ほんとの心の声聞けたから十分だよっ」
「ん」
「…流衣の最後のあの台詞はどうかと思うけどな」
「まじ綺麗だったんだから仕方ねえだろ!!」
「わー…、流衣って無意識に恥ずかしい人だよねー」
「ふふっ、しぃ、前からだよ」
さっきの騒動など、まるで嘘かのような穏やかな雰囲気がくすぐったくて、本当の自分を締め付けるかのように締めた着物の帯を少し緩める。
「…渡瀬家のことを第一に考えるべきだと思ったの」
もう、あたしたちは親の背中に隠れて服の裾を掴んで辺りを伺うような子供じゃない。
「過去とは…決別したかったの」
甘えたな昔のあたしは何れ程の人に支えてもらっていたんだろうか。

