紫苑たちから順に出ていくのを待ってる間、ずっと千世を抱き締めていた。
「…っ、千世…っ!!」
「あら、私の知ってる心様は簡単にはお泣きにならない方でしたが」
おかしそうにあたしの頭を撫でる千世の手は幼い頃、お稽古が上手くいかずに泣いていたあたしを撫でる手と一緒だった。
「心様」
「…っ」
「知っていらっしゃいますか?」
「…なに…っを?」
千世の肩に埋めていた顔を上げて千世を見下ろすとふわりと笑みをこぼされた。
「心様の幸せが千世の幸せです」
ああ、あたしはなにを勘違いしていたんだろう。渡瀬家を背負う、なんて言ったけれど…そんなあたしは、こんなにも人に支えられてる。
「心!」
流衣に手をひかれ、ついに外へ。その瞬間、千世は深く深くお辞儀をしていた。
日光がいきなり、射し込んで目を思わず細めた。
「心」
「……なに?」
車のところから、あたしたちを紫苑たちが呼んでいるにも関わらず流衣が立ち止まった。
「今日の心…」
「流衣たちー!!はやくっ!!」
照れたように告げられた、そのあとに続いた言葉にあたしは、思わず流衣の頭を叩いた。
──…最高に、綺麗だ。

