着物だからか、足がまごついて、なかなか上手く走れない。ただでさえ流衣は足が早いから…少し辛い。
「ちょ…っ、流衣っ!!」
「抱えるか?」
「なに言って…!?」
嘘だよ、と笑う流衣は何だか嬉しそう。でも、そんな、流衣はキライじゃない。むしろ、あたしも何故か嬉しい。
「心」
「なに…っ?」
この廊下を抜ければ、裏から外に出られる。流衣が、そこに車を呼んでるらしいから、早く…早く行かなきゃ。
邸内も叔母様が皆に伝えたのかだんだん騒がしくなってきたもの。急がないと。…父様と母様…。
「心」
「だから、何…っ!?流衣、急がないと!」
先を走ってた紫苑たちが急に止まる。自動的にあたしたちも急停止。
お手伝いの人3人が前を立ち塞いで、進めなくなっていた。
どちらかと言えば彼らは叔母様側のお手伝いの者たち。簡単には退いてくれなさそう。
「心様、お戻りください」
「…っ」
あたしを背後に隠すかのように庇う体勢の流衣の背中のシャツを掴む。

