「酷いわ…流衣」
「どっちが」
決まってるじゃない。
どんなに幸せな日々が待ってようとも、あたしは。
「自分で…決めた道を…」
歩きたい。
「それは、“どの”心の声?」
「…“ただの”心のよ。“流衣たちの知ってる”心の声」
「…やっと、聞けた」
でも、…もう遅い。素直になるには、遅すぎた。話は既にエンジンをかけて走り出しているんだもの。
「心さん、何し…っ!?あなた、何してるの!?」
「叔母様…っ!」
何とかして、流衣を逃がさなきゃ、そう思ってもがいても流衣の腕は弱まることがない。
「流衣っ!」
「誰か…っ!!誰か来てちょうだい!!」
これで流衣が捕まったら、説教ぐらいじゃ終わらない…!
「流衣、早く逃げて…っ!」
「お呼びですか、奥様」
近付いてきた人影とその声に、あたしは目を見開いて息を呑む。
「…紫苑、ナ…ツ、…音弥」

