「ナツ、送ってくれてありがと」
「ん」
しぃの家の門の前。まだ明かりが灯っているしぃの家。大方、しぃパパとしぃママが待ってるんだろう。
「…おじさんに、何か言われたら…」
「ナツといた、って言うから大丈夫っ!パパたち、ナツ大好きだもん」
にっこり笑うしぃの瞳の奥には、まだ不安の炎が燻っていたけれど。…もう、きっと…ひとりにしても、へーきだ。
「ナツ」
「ん」
「明日ね、心に会ったら、めいいっぱい怒ってやろうね!なんで言わないんだ!!って」
「…ほどほどに、だよ?」
悪戯っぽく笑うしぃの髪に指を絡ませて、おでことおでこをくっつけた。
俺たちだけの…おまじない。
「…ナツ?」
「…おやすみ、…おひめさま」
小さい頃よくやったおひめさまごっこ。
“ナツのおひめさまは、しー?”
“ん”
「…懐かしい」
“しーのおうじさまはね、……だよ”
「おやすみ、………ナツ」
俺の…おひめさまは、俺を…おうじさまとは、呼ばない。

