あのあと、教室に戻っても心は外の桜を見たまま、ぼんやりと席についたままだった。
──心。
──あ、授業終わったのね!ちょっと…ぼうっとしちゃった。流衣、次何だったかしら?
俺は、心に、そんな笑顔求めてるんじゃない。
…もう、我慢できねえよ。
紫苑たちに言われたように、バカみたいに真っ直ぐ行動させてもらうからな。
「来たにしても、俺どうする」
何も考えずに心の家の前にいる俺は本当にバカなんじゃないかな、と思った。
「忍び込むか」
昔、心が教えてくれた隠し扉。『心がお稽古の時はここから内緒で入るなっ!』と幼い頃笑いながら言った言葉に微笑みを返してくれたのを思い出す。
──キィッ…。
ここの扉は、簡単に開くのに。
「貴女に断る選択肢など存在しないのよ」
心の扉はどうやったら開けるんだよ?

