「あんな生徒会長の挨拶なんてさー、聞いたことねえよ」

「音弥、最後かっこよかったよー!!」


帰り道、今日もまた迎えの車は呼ばずに歩いて帰る。
歩きながら、笑う紫苑や流衣に溜め息を漏らすけれど音弥は何一つ気にしていなかった。



「…終わったことだろ」

「…みんな生徒会長が音弥で嬉しいんだね」

「ナツー、あたしたちも負けてられないねっ」

「…しぃが仕事するなら、大丈夫だよ」



あたしが一言も喋らないでいると、流衣が心配そうに顔を覗き込んできた。



「やっぱ、心、疲れてんじゃねーの?」

「…大丈夫よ」

「心の大丈夫、聞き飽きた」


絶対無理してんだろー、と口を尖らせる流衣が。


「…流衣…、ごめん」

「……ごめん、も聞き飽きた」



“あの時”と変わらなくて。

泣きたくて、たまらなくなった。


「…ごめんなさい」

「だから、聞き飽きたって言ってんだろー」



貴方に、そんな切ない顔させたくないのに。

だけど、ごめんなさい。



──忘れる、なんて出来ないの。