「私の名前知ってるんですか。」 「名札…です。」 「あ、なるほど。」 佐藤さんは、おばあちゃんを抱え起こすと、椅子に座らせて、大丈夫か念入りに尋ねていた。 天然なのかな? この人。 「あ、君、ありがとね。」 「千尋です。」 「千尋?」 「あたしの、名前です。」 駅員は、ようやく分かったようで、 「ありがとう、千尋ちゃん。」と笑って言った。