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ずぶりと音を立てて、漆黒の刃は光の女神グレスティアを貫いた。

「終わり、だな。」

にやりと、闇は笑った。

闇の永遠の勝利。

だが、

そうではなかった。

「な…」

光の女神に埋まった黒の刃、それが、刺さったところからみるみる白く変わり、変わり、変わり、

そうして伸びた白き刃は、向かい合った闇の女神グレスティアの胸に深々と埋まった。

ふたりの女神は、ひとつながりの刃で繋がれた。

「こ…これは、」

「人間は、「生」と言う未来を選んだ。そういう事でしょ?グレスティア。」

「どうやら…そのようだな。グレスティア。ならば、」

私は、赦(ゆる)そう…

つながったふたりから、光が溢れた。

光と闇の女神は、ひとりの女神になった。

その輝く美しい姿は、この世の人間の誰にも似ず、しかし同時に万人に似てもいた。

右手に刃、左手に竪琴を持った大女神グレスティアは、剣を天に向け大きく一振りすると、黒雲を払った。

そして、大空に舞い上がると骨竜デダと火の竜を同時に打ち破り、血だまりを清らかな水に変えた。

(人の子よ、忘れることなかれ。)

全ての生者の耳に、その声は届いた。

忘れることなかれ
春の恩寵を
大地の豊かさを
木々の尊さを
知の重さを
炎の強さを

忘れるな
闇と光はひとつである

我光と闇の守人
大女神グレスティアなり

人の子よ
忘れることなかれ

それは

赦すことである

全ての生者にこのように告げて、大女神グレスティアは粉々に砕け散った。

女神は、消えた。

だが、美しく光る彼女の欠片は、七色の雨となって万物に降り注ぎ、全ての物、全ての人間にグレスティアが宿った。

清らかな竪琴の音が響き、いつまでもいつまでも途切れることはなかった。