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暗闇の中で、目が覚めた。

暗闇の中で、目を開けた。

暗闇の中で、体を起こし。

暗闇の中で、立ちすくんだ。

見渡す限りの、漆黒。

どこまでも広がり、どこまでも躰の奥深くに潜り込んで来る、闇。

ひとりぼっちだった。

大きな悲しみだけが、ただただ胸を埋め尽くして、自分が何者で、どこから来て、どこに行きたいのか、分からない。

悲しい。
苦しい。
寂しい。

寒くて寒くて、怖くて。闇の中にひとり蹲って膝を抱える。

「…兄さん。」

静寂の中に、鈴を鳴らしたように声が聞こえた。

「ブラッド兄さん。」

不意に、両肩に温かい手が置かれた。

「ほら、私だよ。」

柔らかくて、温かい声音。嗚呼、何度悲しみを背負えばこの罪が許されるのだろう。

それでも嬉しかった。
例え嘘でも、それでも良かった。

「…グレイ……ッ!」

柔らかい躰を、抱きしめる。
涙が止まらない。

嬉しいのか。
悲しいのか。
それとも
苦しいのか。

分からない。

「グレイ……」

「ブラッド兄さん。しっかりしてよ。」

目と、目が、合う。

銀よりは少しくすんだグレー。空を旅行く、雲の色。