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どさりと、音を立てて。ブラッドと呼ばれていた男はいともあっさりと死んだ。

「ブラッド、死んだか?」

返事は、ない。

「ふ、ふふふ、ははは、ははははははははは!!!」

女神の涙に願えるのはただの一度きり、わざわざ誰が他人のためにそのチャンスを使うだろう?

「馬鹿だなぁ、ブラッド。はは、こんな簡単な催眠に引っ掛かって…本当に妹が生き返ると信じてたのか?」

彼は、催眠をかけた。

ブラッドと、そしてシルヴァに。

そして、計画は見事に成功した。シルヴァはグレイに成り切り、ブラッドは理性を失った。

そしてブラッドが死んだ今、ブライトに障害は何一つなくなった。

「さて、始めようか?シルヴァ。」

男は、朦朧としている娘を立たせると、5つの涙が収められている台座の前に導く。

びちゃびちゃと、娘が死んだ男の血を踏みしだく度に、湿った音が辺りに満ちる。

(─血か。)

ここまで来るのに、数多の人間の屍を踏み台にして来た。

今さら、罪悪感に苛(さいな)まれることもなかったし、ここに来て止める気もさらさらない。

その場から一歩退くと、ブライトは王家に伝わるグレスト創世記を開いた。

そう、彼は次期グレスト王の兄、すなわち王族なのである。

一般に知られているグレスト創世記とは違い、神聖文字で書かれているのだが、当然彼はそれを容易く読むことができた。

大きく息を吸う。

古(いにしえ)より伝わる
グレスト王家と
大女神グレスティアとの
契約に則り

これより
グレスティア召喚の儀を
執り行うもの也

こうして、大女神グレスティア呼び寄せの儀式が始まった。