それでも君と、はじめての恋を



「「笑った……」」


口を揃えてふたりが言うと、モモはすぐに無表情に戻ってしまう。


きっと無意識に笑ったから、驚いてるふたりにモモは不思議そうにするんだけれど。それはまだ、葵と純には分からないみたい。


「――って、みじかっ! もっと表情のレパートリーないのぉ!?」

「鉄仮面とか言われるわけだよ……」


騒ぐふたりに対して、モモが小さく「鉄仮面……?」と呟いたのが聞こえて、あたしは笑ってしまった。


モモの視線を感じて見上げると、何で笑われるのか分からないって顔してる。と、思う。


「はは! モモ、口に出さないとこのふたりには伝わらないよ」


そう言うと、モモは純と葵を見つめてから、あたしを見返す。困ったように、でもどこか、楽しげな顔をして。


「つうかまぁ、桃井は合格だよねぇ? 葵」

「噂が本当だったら不合格だったけどね」

「……は? 何の話……てか、何であたしがモモとここで勉強してたこと知ってたの!?」


そうだ、そうだった! 勉強会の時は確かに、葵と純は先に帰ってたはずなのに。


モモは大して反応を示さずに、あたしは葵と純を食い入るように見つめた。


すると、純がニヤニヤと口の端を上げて葵の肩を抱く。すぐ叩き落とされたけど。