「じゃあ何? 噂は嘘でいいの?」
「……そうなる」
「だってよ」と笑う純に葵は言って、モモはコーラに手を伸ばした。
純はどれだけ笑ったのか、「お腹痛い」とまだ喉仏を上下させてモモを見つめる。
「は~……ウケる。じゃあアレかぁ。噂がひとり歩きのち、周りに避けられてるってことでオッケェ?」
「純、その人差す癖キモイから」
ビシッと人差し指をモモに向ける純と冷静な葵の言葉に、モモは無反応。
「……ていうか、モモってそんなに慣れ合うの好きじゃなさそう」
自然と口に出た言葉に、あたしは思わず口を覆う。
分かったような口をきいてしまったのと、そうじゃなかったらどうしようと思って。
恐る恐るモモを見たけれど、怒ってもなければ、悲しそうでもなかった。
「まあ、得意ではない」
「ふぅ~ん? 用がなきゃ話し掛けない感じ? だから変な噂流れるんだよ。バカだなぁ桃井」
「てか、もともと一匹狼っぽいじゃん。やたら飄々としてるし、オーラ自体怖いし」
ズバズバ言いすぎだよと思ったのに、あたしも純も葵も止まってしまう。
「そうかも」
モモが少しだけ、目を細めたから。
あたしじゃなくても、分かる。
モモが笑った顔を初めて見たふたりが、固まってるんだから。



