それでも君と、はじめての恋を



「……入学してすぐ、上級生に喧嘩吹っ掛けられたのは本当。街中でもたまにある」

「中学の頃から相当悪いことしてたっていうのは?」


葵の問いかけにモモは眉を寄せてから、「ああ……」と思い出したように口を開く。


「たまに一緒にいた奴らが、補導とか停学とかされてたから……?」


……モ、モモが自分から喋ってる!


話の内容よりも、あたしはそっちに意識がいってしまう。モモが話し続ける貴重さを、きっと葵と純は分かっていない。


「殴り合いとかしたことはないけど。……何か、絡んできてすぐ逃げてくから」

「……え、じゃあ結局、相手は何もせずに逃げてくわけぇ?」

「桃井は、喧嘩受ける気あんの?」


頷くモモを見て、ふたりは笑い出す。あたしはモモが受け答えするなら黙っていようと思ってたけど、さすがに笑いすぎだ。


「ちょっと、何笑ってんの!」

「いやだって! 超怖がられてんじゃん!?」

「応戦しようとした瞬間、逃げられるってことでしょ。目力ハンパないもんね」

「……俺そこまでガラ悪い?」

「ぎゃっはっはっ! 自覚うすっ!」


純がお腹を押さえて、ゲラゲラと笑い出す。足までバタつかせるもんだからテーブルが揺れて仕方ないけど、我慢だ。