「あたしだって全部知ってるわけじゃないけど、モモが話したくないことだってあるかもしれないじゃん!」
クンッとカーディガンの裾を引っ張られて、あたしは左を向く。
モモがいることは分かっていたのに、困ったように笑うモモに胸が締め付けられた。
「いいよ」
「……だって」
よくないんだもん。
あたしだって噂を完全に信じてたわけじゃないけど、怖い人なんだとは認識していたから。
でも本当は、噂とは違うじゃん。
もし噂に少しでも真実があったとして、それをモモが話したくないことだったら、無理に聞くことはしたくないじゃん。
「モモは、悪い人に見えない」
自分が今どんな表情をしてるのかなんて分からないけれど、伝わればいいと思った。
見上げるように視線を向けるあたしに、モモは少し目を見張ってから、すぐに逸らす。
首に手を添えたモモが見ているのは葵と純のどちらかだ。
「……どうりで、避けられてると思った」
ポツリと呟いたモモの言葉にあたしは首を傾げて、葵と純は視線だけ合わせると、言葉を発する。
「どうりでって、何ぃ?」
「噂は嘘ってこと?」
ふたりの質問に何て言おうか迷ってるのかモモは項垂れて、首の後ろを掻いてから顔を上げた。



