――ぬ、あ!
話し掛ける前に窓際に座るモモに気付かれてしまって、声と共に出しかけた右手が行き場を失う。
「や、やあ!」
本来ならモモの肩を叩く予定だった手は、意味不明な挨拶と同時にサッと上げられた。
死ぬほど恥ずかしく思うのは、モモが明らかに何ソレって顔をしたから。
「どうしたの」
良かった。
モモまで「やあ!」とか返してきたらどうしようかと思った。そんなことされたらキャラじゃなさすぎて吹き出す。
「あ、あのね! テスト全部返ってきたんだけど、赤点なかった!」
「ほんと」
「モモのおかげ! あたし英語で60点台取ったの初めてだよ!」
ヘラッと笑うと、モモは少し目を丸くさせて「俺?」と言う。
「え、だってモモが教えてくれなかったら、あたし絶対赤点のオンパレードだったもん」
「解いたのは俺じゃない」
「だからっ、モモはその解き方を教えてくれたじゃん! だからお礼を言いに来たの!」
何を言っても謙遜されそうで強めに言うと、モモは考えるように視線を宙に泳がせた。



