「……赤い」
鏡に映った自分の頬がチークとはまた別の、ほんのりとした赤色に染まっていた。
両手で頬を包んでも手のひらに感じるほどの熱はないのに、やけに顔だけが熱い。
それから胸の奥底から湧きあがる、痛みにも似た、熱を帯びた鼓動。
桃井くんといると、いつもそう。
桃井くんを考えると、最近いつも顔が、胸が、熱くなる。
「……何だっていうの……」
ひとり洗面台に両手をついて、大きな溜め息をつく。俯いた顔の横からサラリと落ちる、完璧に巻きの落ちていない髪。
これじゃあまるで……。
「……」
恐る恐る顔を上げて、もう一度鏡に映る自分の姿を見る。
まばたきを忘れたあたしの顔は、見たことがないほど真っ赤に染まっていた。



