「あー……。こんなに頭使ったの、初めて」
かれこれ3時間以上勉強を見てもらい、頭が良くなった気がする。
気がするだけじゃダメだけど、赤点は免れそうな自信はある…!
「本当にありがとう!」
テーブルの上に広がっていた教材を片づける桃井くんにお礼を言うと、桃井くんは手を止めて「うん」と、いつもと変わらない短い返事。
そっけないとは違うんだけど、何だかそんなにあっさり返されると、もっと感謝の気持ちを伝えたいあたしはどうすればいいんだろう。
きっと、桃井くんはそんなもの望んでいないんだろうけど。
「あ、あたしちょっと、ト……お手洗い行ってくるね!」
カバンを持って席を立つと桃井くんは頷いて、あたしはメイクを直しにいく。
……普通にトイレって言えばいいじゃん!
何でか言い直した自分を恥ずかしく思いながら、お手洗いに入った。



