それでも君と、はじめての恋を



時たま解説と同時に書きこまれる文字が、意外にも綺麗なこととか。


近付くたびに香る、桃井くんの香水がアリュールオムなこととか。


頬杖をつくのかと思ったら、首に手をあてる癖とか。


学校では見れない、近付かなきゃ分からない桃井くんが見れて、凄くドキドキしていた。



「ここ、重点的にやれば大丈夫だと思う」


あぁ、何か。集中しなきゃいけないのに、ぼんやりしちゃう。


……桃井くんの髪って本当、自然にピンクとブラウンに分かれてるな。


髪だけ見たら可愛いし、ふんわりしてそうなのに。何で桃井くんは無愛想なんだろう。鉄仮面とか言われてるの、知ってるのかな。


そんなことを考えているとピンク色の髪が可笑しくなってきて、咳き込んでしまった。


「……大丈夫?」

「げほっ。……ごめん、へーき」


ニヤけただけだから。

そうは言わずに笑うと、桃井くんは眉をひそめる。


それは多分、不思議に思ってるか、納得してない時に見せる表情のひとつ。


でも桃井くんは何を言うでもなく、あたしの様子を少しうかがってから綺麗な顔に戻る。


それがまた、あたしには新鮮で。緩む顔を引き締めながら勉強を続けた。