それでも君と、はじめての恋を





「……ごめん。ここも分かんない……」


少しの会話のあと、勉強モードに突入。テーブルに並ぶ教材に泣きそうになりながら、あたしは桃井くんに頼りっぱなし。


「……これは、be動詞が……」


もう、何回目の“分からない”なのか。そろそろ苛立ってもいいのに、桃井くんは表情を変えることなく丁寧に教えてくれる。


本当に、自分のバカさをここまで呪ったことはない。


……恥ずかしい、マジで。分かりやすい説明なのが更に追いうちをかけるよね。


「分かる?」


もう開き直って聞きまくるしかないなと思いながら、視界いっぱいに広がる教科書を見つめる。


「うん、分かりやすい。あと、こっちも教えてもらっていい?」

「それは……」


淡々と、でも分かりやすく教えてくれる桃井くんの声が耳の奥まで響く。


ファーストフードのテーブルは、どうしてこんなに小さいんだろう。


距離が、近い。

桃井くんが、いつもより近い。


教えてと言うたび、分からないと言うたび、軽く身を乗り出してくれる桃井くん。


シャーペンを持つ案外ゴツゴツした大きな手が、流れるように教科書の上をなぞる。