それでも君と、はじめての恋を





「桃井くーん、何食べる?」


ガヤガヤと騒がしい駅前のマックは夕方、学生で溢れかえる。


桃井くんはまるで初めて来たと言わんばかりの表情でお客さんを眺めていて、声を掛けるとカウンターに肘を置くあたしの隣に来た。


「単品か、セットか。飲み物だけにする?」

「じゃあ、コーラ」

「えぇ〜。イモ食べようよ、イモ!」

「イモ……?」と言う桃井くんにかまわず、あたしはアレコレと頼んで、会計を済ませた。


「横にずれて少々お待ち下さい」


店員に生返事を返すと、桃井くんは目をぱちくりさせてあたしを見た。


初めて見た表情だと思ってジッと見返していると、桃井くんは何かに気づいたようにカバンへ手を掛けた。


「あー! いい、いい! お金でしょ? 今日はあたしに付き合わせてるんだから、奢らせて!」


財布を出される前にそう言うと、桃井くんは悩んでるみたいで。


「そういうもん?」とか可愛いことを言うけど、その前に隠された言葉にあたしは満面の笑みを見せた。


「友達は、そういうもん!」

「お待たせしましたー」


そう声を掛けてきた店員に桃井くんは一度視線を移してから、再びあたしを見る。


あ……笑った。


「席、2階?」

「あ、うんっ! ありがとう」


ふたり分の食べモノがのったトレーを桃井くんが持ってくれて、桃井くんが声を出して笑う時ってあるのかなぁ……なんて思いながら、2階に上がる後ろ姿を追いかけた。