あたしはニヤける顔を誤魔化すように咳払いをしてから、ブレザーのポケットに両手を突っ込む。
桃井くんはやっぱり無口で、無表情で。
桃井くんが誰かと歩いてるなんて周りの生徒は驚くだろうけど、あたしは何だか嬉しい。
桃井くんの隣を歩けてるのが、どうしようもなく嬉しいんだ。
ねえ、桃井くん。
他にも、並んで歩く人がいる? 放課後に、寄り道したことある? 他の人にも、勉強って教える?
……全部、あたしが初めてだといいな。なんて、ありえないかな。中学の時は、どんな感じだったんだろ。
でも、高校に入ってからでもいいんだ。高校の友達っていう枠の中だけでいい。あたしが全部、初めてだと嬉しい。
そしたら、あたしがたくさん楽しいことを教えてあげられるかもしれない。一緒に、楽しいことが出来るかもしれないでしょ?
もっと、仲良くなりたい。
知りたい、関わりたい。
止まらない欲が、あたしの胸を熱くさせた。



