「モモが好きだよ」
「――……、うん」
「……」
顔を隠していた両手を外してモモを見たのは、今何か言い掛けたんじゃないかと思ったから。
モモは相変わらず机に腰掛けていたけれど、俯いていて表情が見えない。
「今……何か言い掛けなかった?」
「……別に」
「嘘だ」
そして無視だ。
「――っ!」
ガタッと音を立てて席を立ったあたしはモモの腕を押して、距離を縮めて、無理やり顔を上げさせた。
仰け反ったモモの顔はやっぱり、赤みを帯びていた。
「何……っ」
「……モモって、好きって言われるの弱いよね」
まじまじとモモの顔を見ていると、大きな手があたしの頬を押して強制的に顔の向きを変えてくる。
もちろんその力に反発したけれど、敵うはずもなく。自分の手でモモの手を退けるより先に、抱き付いた。
カチン、と音でも出そうなほど強張るモモの体は暫くすると力が抜けていく。
『……何、急に』って、今日は言わないの? 言わないなら何で、抱き締め返してくれないの?
「キスはしたくせに」
――ゴホッ!と咳き込んで咽続けるモモなんかお構いなしに、あたしは腕に力を込める。
これじゃあ、あたしがプロレス技でも掛けてるみたいじゃんか。
好きって言ってるのに、『うん』だけじゃ分からない。
何か返してよ。言葉でも、行動でもいいから。モモなりの愛情表現を、あたしに示して。
あたしだけのモモが見たい。
ふたりだけの秘密が欲しい。
ねえ、モモ。
「誰も見てないよ」
「――……!」
背伸びして、さっきよりもほんの少しだけ長く、モモにキスをした。
トン、と踵を床に付けるとあたしは口の端を上げる。
モモが手の甲で口を押さえて、みるみる顔を赤くさせたから。



