それでも君と、はじめての恋を



「……優木、怒ってた?」

『開口一番にチャラ男撲滅とか言われてみ!? 超傷付いた! 誰のせいって桃井のせいだからな!!』


ギャアギャア喚く純に感じた違和感は、いつもと違う言葉使いのせいだと気付く。


……純って、男友達の前だとそんな喋り方なんだ。何で? 変なの。純じゃないみたい。


でも不思議と、微笑ましく思った。


「優木が本気で怒るとは思えない」

『だからそれが嫌だったんだよこのバカ! そんな中途半端に怒られてみ!? まるで俺がいいことしたみたいじゃんよ! 俺は、俺に冷たい葵にちょっかい出すのが好きなんだよ!!』

「純キモイ!」

「――フッ!」


聞こえるように声を出すとモモは顔を背けて吹き出した。宙に掲げられたままの携帯は、沈黙。


『……ちょっ……とぉ~! 渉にまで喋ったのかよぉ~!!』

「ハハッ!」

喋り方、戻った。


ケラケラ笑いながら「切っちゃえ」と言うと、モモは携帯を耳に当てる。


「また明日、聞くから」


純が何か言っていたみたいだけど、モモは口の端を上げるだけで、ふたりの電話は終わった。


「純、なんて?」

「明日覚えてろよって」

「ハハッ! 純って、モモと話す時はあんな喋り方なんだね。知らなかった」

「ああ……特に気にしたことない」


モモらしいな。まあ、喋り方は違くても中身は変わってないみたいだけど。


葵にも教えてあげようなんて考えていると、感じる視線。


「……見てただけ?」

「ん」


ならいいけど……や、見られてるだけっていうのも何か、微妙だけど……。


モモから目を逸らして、落ち着かない気持ちのまま髪の毛先をいじった。


さっきは普通に話せたのに、体のあちこちがそわそわする。仲直りって曖昧……。みんな、仲直りしたあとはどうしてるんだろう。