「久坂、さんを紹介してほしいって話が、何?」
「その前」
「……ま?」
前って何。ていうか、いつからドアに寄り掛かってたの。盗み聞き?
「夜中に久坂とふたりで歩いてたってとこ」
「……ああ……」
え? それが何? ていうか怖い。自分がどれだけ目つき悪いか分かってない。本気で怒ってない? 何をそんなに怒ってるの?
「……それがどうかしたの」
「何回もってどういうこと」
「……」
……え。何これ。もしかしなくても、何か疑われてる? 何を根拠に? たかが一緒に歩いてただけで?
「久坂さんって、バイト先の先輩だけど……」
そんなことで怒られる意味が分からなくて、一応久坂さんの正体を言ってはみても、モモは表情を変えることなく見下ろしてくる。
「遊んだ帰りって何」
「……バイト仲間とご飯くらい食べに行くでしょ」
「その後ふたりで遊んだんじゃないの」
言葉の最初に『どうせ』と付いてるような言い方にカチンと来た瞬間、純が割って入ってきた。
「はいピリピリしなぁ~いっ!」
向かい合うあたしとモモの間に腕を伸ばした純は、今までどこに潜んでいたのか。
「ほら、予鈴もなったしさぁ。とりあえず落ち着くべきだと俺は思うよ~?」
一触即発だった気分は少なからず削ぎ落とされ、あたしはずっと見上げていたモモから目を逸らした。すると、モモがあからさまに不機嫌そうな溜め息を大きく吐いた。
それが多分、また頭にきた引き金。
「……何その溜め息」
「別に」
「ちょ、ふたりともぉ~」
「何がそんなに気に食わないの?」
「全部」
ぜっ……! 全部って余計分かんないんですけど!?



