「何で、ねぇ。出来心っつーか下心? ああこの子俺のこと好きなんだなーって思ったら、何となく」
「彼女に悪いって思わなかったの?」
「痛いとこつくなー……。それ他の男にも聞けよ。俺、常に悪いと思ってたかって聞かれたらノーだもん」
そこまでぶっちゃけてくれなくても……いや、聞いたのはあたしだけどさ。
「何となくで浮気されたら、たまったもんじゃないと思うんだけど……」
「一応言っとくけど、その時は彼女から気持ち離れてたから。若干だけどなー」
食事の合間に答えてくれるヨッシーに溜め息をつくと、黙って会話に参加していた久坂さんがスプーンを置いた。
「要は気持ちの隙だよな。特別デカいことがなくても、ちょっとしたことの積み重ねで他の子に揺れちゃうっていうか」
「浮気したやつも悪いけど、浮気させるやつも悪いってことっすね!」
それは、浮気した方の都合のいい言い訳じゃん。って思うけど、違うの?
「もー……意味わかんない」
でも、気持ちの隙っていうのは分かるかもしれない。それを意識していても、していなくても、隙間があるなら何でも入ってしまう気がする。
自ら何かを入れるのか、誰かが入ろうとするのか。それだけでも結構違うのかもしれない。
「……ヨッシーは、浮気相手に迫られたの?」
「ん? ……迫られたっつーか、好かれてるってことは分かってて。だから彼女とうまくいってない時に、すげー可愛く見えたり? それでまあ、ねぇ? 言わせんなよ」
「自分から誘ったんだ……」
「軽蔑したような目で見んなよ! しょうがねぇだろ、その時はそういう気持ちになったんだからっ」
別に軽蔑まではしないけど、嫌だなって思うというか。
しょうがない、かぁ……。
今まで浮気した女友達だっていたし、おにぃや佐野くんや純とかと話していると、そういう話題が全くないわけじゃなかった。
ただ、何でそんなことしたの?と思う自分がいて。ヨッシーの話を聞いてるとガッカリする自分がいて。
「……笑い飛ばせたら楽なんだろうなー……」
浮気ぐらい大したことないじゃん、ってアッサリしてる自分だったら、もっと上手に葵を元気づけられたかな。それとも逆に、傷付けてしまうかな。



