それでも君と、はじめての恋を





「男の人が浮気する時って、どういう気持ちなんですか?」


バイトの休憩中、スタッフルームのソファーで賄いを食べていた久坂さんに尋ねると、その動作が固まってしまった。


「え……う、浮気?」

「どんな理由でするのかなーと思って」

「いや、俺、したことないよ!?」

「例えばの話ですよ」

「なーんだ。渉がされたのかと思った」


向かい合うあたしと久坂さんの丁度中間に座っていたヨッシーが言って、「違うよ」と返した。すると手を止めていた久坂さんが持っていたスプーンを揺らして、悩ましげな声を出す。


「んー……そういうのはコイツに聞いたほうが」

「なんで俺っすか! まあしたことはあるけどな!」

「うーっわ。ヨッシー最低」


あからさまに顔をしかめると、ヨッシーは「すいません」と肩を落としたけれど、すぐに残っていた賄いを食べ始めた。


久坂さんは大学1年生で七尋くんのひとつ下だし、何か聞けると思ったんだけどな。


「彼女以外の子にちょっと気があったとか、ないんですか?」

「あー……それは、うん、正直あるな」

あるのかよ!

「ハハッ! 渉、顔に出過ぎだろ。男なんてそんなもんだって。ねえ、久坂さん」

「いやー、まあ俺とヨッシーはそうだな」

「……あたしの兄も多分そうです」


どっちかと言えば。彼女がいようがおかまいなしに、好みの子を見れば可愛いだの付き合いたいだの騒ぐもん。


「ヨッシーはなんで浮気したの?」


ソファーに座るあたしは自分の膝に頬杖をついて、床に直接座るヨッシーに視線を移す。


休憩が被ることが多いヨッシーはそれなりに遊び人なんだなと知っているけれど、純ほどではないというのがあたしのイメージだった。