「いや、ないでしょ。逆に欲し……っ」
「またまたぁ!」
言い終わらない内にバシッと背中を叩かれて、次々と勝手なことを言ってくれちゃう恋愛話が主食な高1の女子たち。
あたしは叩かれた背中をさすってから、中途半端に右半分だけ着ていたコートを脱ぐ。
「てか見たんだって! 渉が背の高い男たちと歩いてたとこ!」
無駄に男“たち”と強調するのは、やめてほしいんですけどね!
「それ、多分おにぃの友達といた時だよ」
「お兄さんの友達かぁー。やばいね。どこまでいった?」
「てかっ、付き合う気ないなら誰か紹介してよ!」
「渉〜合コン開いてー」
次々と投げかけられる言葉にめまいがしてきて、あたしは「ストップ!」と右手を出した。
「何でいっつもその手の話をあたしに振るかな!」
「はぁ? 今更だなっ」
「だって渉にしか聞けないじゃん」
だから、何でそうなるのかってことを聞いて……。
「「渉が1番経験豊富なんだから」」
そう口を揃えたクラスメイトに、がっくりと肩を落とす。