「――あの、すいません。この子が、テディベアを……」
「あー、大丈夫、大丈夫! あたし達も探してたから、見つかって良かった!」
大人っぽい女の子が左右に手を振るけれど、あたしは次の言葉が出てこない。
……何か、すごい、オーラのある集団ですネ!
「彗が肩車なんてすっからだよ。目立ってしょうがねぇっつーの」
「……自分で当てたくせに持ちたくないって言ったのは祠稀でしょ」
「俺のせいにすんじゃねぇよっ!」
「もうっ! 喧嘩しちゃダメだってば!」
睨みあうふたりの男子に、もうひとりの可愛らしい女の子が声を出すと、急に静かになる。
「あ、あの、何かご迷惑をかけたり……」
「迷惑もなにも、急に突進してきてクマ!だよ。こっちからすれば誰だこのガキ――イテェ! っにすんだよ凪!」
「いやぁ、ごめんねー口の悪いバカなロン毛で。ハゲればいいよね?」
「ハゲねーよ! つうか可愛い可愛いって騒いで連れ回したのお前だろーが!」
「人を誘拐犯みたいに言わないでくれる!?」
大人っぽい、凪というらしい女の子と、綺麗な顔をした祠稀というらしい男の子は言い合いを始めてしまって、あたしはどうすればいいのか分からない。
「……気にしなくていいよ」
全体的に色素の薄い、彗という男の子がそう言っても、気になるというか……ついていけないというか……。
「あ、あの! あたし達もすぐに湊ちゃんのこと事務局に連れていかなかったから、心配かけさせてごめんなさい……!」
「そう! 有須の言う通り! ほんっとゴメンね!」
可愛らしい有須という女の子に続いて、凪という子も喧嘩をやめて口を開く。
「や、こちらこそ……! お手数かけてすいません、ありがとう御座いました」
ぺこりと頭を下げてから湊ちゃんに目線を配ると、テディベアは彗という男の子の元へ返された。
「おにぃちゃんとおねぇちゃん、ありがとう」
「どういたしましてっ! ごめんね、クマあげられなくて」
「ううん」
湊ちゃんがはにかむと、耳に馴染む声が聞こえた気がして振り向く。



