それでも君と、はじめての恋を



「湊ちゃんっ!」


呼び掛けに反応して振り返った湊ちゃんは、あたしを見つけると笑顔を向けてきた。


安堵すると同時に駆け寄ると、湊ちゃんも駆け寄ってくる。なぜか、とんでもなく大きいテディベアを持って。


「~もうっ! ひとりでどこ行ってたの!」

「これ! クマさんがね! 空歩いてたのっ!」


歩くか!と突っ込みたくなったけれど、あまりにも無邪気に笑うものだから脱力してしゃがみ込んでしまう。


あたし以上に好奇心旺盛かもしれない……。


「はぁぁあ……もう、ほんと心配したんだからね……」


長い長い溜め息をつくと、自分と同じ背丈ほどのテディベアを抱き締める湊ちゃんがその手に力を込めた。


「ごめんなさい……」

「……」

そんな心底申し訳なさそうに謝られると、怒る気にもなれない。


まあ、まだ小学生だもんね。興味持ったら突っ走っちゃうよね……って、あたしもじゃん。



「もういいよ。見つかって良かった」


ふぅ、と今度は安心の溜め息をつくと、湊ちゃんはまだ眉を下げながらもコクンと頷いた。


ていうかあたしも、このテディベアには目を奪われたし――……。


「湊ちゃんコレ! どうしたの!?」


そうだ、さっき見た時は誰かが肩車してたんだ!


慌てて辺りを見回すと、先程湊ちゃんが駆け出してきた場所に人影があった。


「あのおにいちゃんが、持ってたの」

「……えっと、それは、貰ったの?」

「ううん。抱かせてくれただけ」


首を振った湊ちゃんに混乱しながらも、じゃあ返しに行かなければと小さな手を引いて腰を上げる。


ぼんやりと見える程度だった輪郭がハッキリするまで歩み寄ると、4人の男女があたしと湊ちゃんを見つめていた。