それでも君と、はじめての恋を



「――っきたぁ!」

「さっきからひとりで何してるの、アンタ」


お母さんの不審者を見る眼つきも何のその。

割と返信が早かったモモのメールをワクワクした気持ちで開く。


From:モモ
件名:Re:Re2:
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
明日ね。
――――――――――――


「…………」

明日ね? 明日……ああ、明日。


あと2時間もしない内に明日だけど、それはつまり深夜にねってことではなく学校でねって解釈でいいんでしょうかね。


「――つれないにもほどがあるわ!!」

「なーに騒いでんだよ、渉」


ギャーッと今にも暴れ出しそうだったあたしに声を掛けてきたのは、おにぃ。そのうしろには「お邪魔しまーす」と言う佐野くんの姿もあった。


「モモに会いたいなって! ハートまで付けたのにこの返事だよ!」

「んー? ……ふっ! マジかよ! モモある意味最強だな!」


画面を覗いたおにぃはゲラゲラと笑って、佐野くんもメールを見ると「うわー」と言いながら口元を緩ませた。


「そっけなくね? 何、彼氏ってツンデレ?」

「そんな分類じゃ可愛すぎる」


笑う佐野くんにむつけると、おにぃがフッと意味ありげに笑ってカーペットの上に腰を下ろした。


「なんだかんだ続いてんだからいーじゃん」

「……は? え? ……まさ、か?」


両手で顔を覆って盛大な溜め息を吐くおにぃから佐野くんへ視線を移すと、空気にそぐわない笑顔を向けられる。


「フラれた記念にパチンコして負けましたーっ!」


グッと握られた佐野くんの両拳は真っ直ぐと親指だけが立てられ、ものすごく楽しそうだった。


「記念じゃなくて気晴らしだろ! 負けたけどっ」


ああ……なんて哀れな兄。