それでも君と、はじめての恋を



「どんな彼氏? タメ?」


ヨッシーが賄いを食べながら聞いてきて、あたしはモモの姿を思い浮かべる。


「同じクラスで……あ、席も隣なんですけど。何て言うか……ク、クール?」

「眼つきが悪くて無口で無愛想で反応激薄の間違いでしょ」

「ヒドイ! その通りだけど反応はそこまで薄くない!」


でもクールは違った! モモには使っちゃいけない言葉だった!


「何かよく分かんないけど、つれない彼氏ってこと?」


うーんと悩んでいると、不思議そうなヨッシーの声。


「……根本的に優しいけど……普段は結構つれない、かな?」


説明下手なあたしは葵に視線を向けると、フッと鼻で笑われる。


「いい奴ですけど、どっかズレてるっていうか。鈍感かと思えば、渉の気持ちに気付いてても素知らぬフリする時もあったり」

「あーっ! そう! ここぞって時にダメっていうか。知らないフリしてすぐ逃げるんですよー」


まあ人のこと言えないけどね。
押して迫ってたはずのあたしが最終的に羞恥心に負けて逃げることも多々ありましたけどね。


「ふーん。でも好きなんだ?」

「久坂さんストレートすぎます!」

「ベタ惚れなんですーって言えばいいじゃん」


葵の言葉にどことなく笑いが含まれてるのを感じていると、久坂さんは「なるほどね」と言ってから最後のドリアを口に運んだ。


するとスプーンを置いた久坂さんが再び声を掛けてくる。


「明日か明後日もバイト出る?」

「え。……はい、一応」


答えると、なぜか久坂さんは楽しげに口の端を上げた。そのせいか、表情までもが何か企んでるように見える。


「ベタだけど、いい方法があるよ」


……方法?


「つれない彼氏に1度は使ってみる価値あり、かな?」


あたしと葵は顔を見合わせてから久坂さんを見るも、ニコニコとした笑顔の真相は分からないまま、戻ってきた店長に呼ばれてしまった。


結局その方法というのを教えてもらったのは、人生2度目のタイムカードを押した数分後。