「湊。渉におやすみは?」
「おやすみなさーい」
「う、うん! おやすみっ!」
湊ちゃんを抱きかかえたままリビングを出るモモの背中を見送っていると、カーッと頬が熱くなった。
な、なんか今の、モモの言い方、お父さんっぽくない!?
ていうか、湊ちゃんと3人でいると何か、家族っぽい…………なんてね! なんてね!
バシバシと近くにあったソファーの背もたれを叩いて、ひとりで盛り上がるあたしを見てるのは犬モモだけ。
「……」
その丸くて黒い潤んだ瞳に見上げられていると、だんだん冷静になっていく。
自分の思考に顔赤くして何やってんだか……。
「――ん? 何?」
前足であたしの足に触れてきた犬モモは、ソファーの上を見たりあたしを見上げたり。
……ソファーに座りたいの?
足短いから登れないのかなあ、と思いながら抱っこしてソファーに乗せてみると、犬モモはソファーにあったテディベアに噛みついた。
「あ」
それ、湊ちゃんのだ。
すると犬モモはテディベアごとソファーに腰掛けたあたしの膝に乗って、また見上げてくる。
運んで、ってこと?
「いいこ」
何度か頭を撫でてから犬モモを抱きかかえて、湊ちゃんの部屋へ向かった。
一瞬どこの部屋だろうと思ったけれど、リビングを出てすぐの場所にあったドアが開いていて、そこが湊ちゃんの部屋だと気付く。
覗くと部屋はベッド脇の照明しか点いていなくて、布団の中に入る湊ちゃんとベッドに腰掛けるモモの姿があった。
とりあえず犬モモを床におろしてあげると、すぐさまご主人の元へテディベアを届けに行く。
気付いたモモが受け取って湊ちゃんに渡すと、少なからずあたしも任務を完了した気持ちになった。
あたしもそろそろ帰らないとな。
「おにいちゃん、ちゅーしてー」
そう、ちゅーして帰…………はい!?
リビングへ戻ろうとした体をぐるんっと反転させて、再び部屋を覗けば衝撃の連続。
湊ちゃんのおでこに軽く唇を落としたあたしの彼氏は、「モモにもー」と湊ちゃんが差しだした犬モモにべろんと唇を舐められていた。
「…………」
妹とペットに先越された……!!



