それでも君と、はじめての恋を






「湊ちゃん眠そう」


夕食を食べ終わったあと、すぐにお風呂に入った湊ちゃんは現在モモに髪を乾かしてもらったところ。


うとうとしてるのが、見てるだけで分かった。


3時間近く泳いだあと家で宿題もして、お腹もいっぱいでお風呂入っちゃったら眠くなるよなぁ。

あたしなんて学校から帰ってきたらすぐ寝ちゃうことが多いっていうのに。


「眠い?」

「んぅー……」


モモの両脚の間に座る湊ちゃんはまだ寝たくないのか、左右に首を振る。だけどモモは認めないようで湊ちゃんを抱きかかえて立ち上がった。


「やだー! 渉ちゃんと遊ぶのーっ」

「……」


モモの腕の中から逃げようとする湊ちゃんに、あたしはヨロリと体を揺らして胸を押さえる。


く、苦し……胸がギュンッてなった……。


「はなしてよぅ!」


ジタバタする湊ちゃんに困った顔をするモモはあたしに視線を移して、それは多分SOSのサイン。


いいじゃん、まだ起きてても。って思ってはいるけど夜8時を過ぎてるし、そろそろ寝る時間なのかもしれない。


「湊ちゃん」


立ち上がったあたしを見てくる湊ちゃんは少し眉を下げて、きっと寝なきゃいけないことは分かってるんだと思う。


「今日はもう遅いから、また今度遊ぼう?」

「……モモといっしょにお散歩してくれる?」

「いいよー。あとは? 何したい?」

「んと、ケーキ……食べにいきたい」

「じゃあお店探しとく! また遊びに来るよ」


すっかり大人しくなった湊ちゃんがおずおずと出した小指に自分の小指を絡ませて、軽く上下に振った。


「約束ね」

「うんっ」


笑顔を見せた湊ちゃんの頭を撫でるとモモの視線を感じて、無意識に目を向ける。


「寝かせてくる」


そんな優しく微笑まれると、寿命が縮むんですけど……。